仕組まれたカーチェイスか?! 謎の東海大の元留学生
仕組まれたカーチェイス?! 東海大の元留学生
夜、モスクワからレニングラードへ向かう列車「レッドアロー号」に乗るためにホテルのロビーで案内してくれる通訳の人を待ってました。なかなか来ないのでフロントに聞いてみるのだけど片言の英語とロシア語では、なかなか通じずに要領を得ない感じで、時間だけがせまってきました。
その時、客室の方から歩いてきた数人のロシア人の中の一人が話しかけてきました。「どうしました。」おお、なつかしき日本語の響きである。訳をその男に話しました。
その男はフロントに、ふたことみこと話しかけたが、直ぐに「わかりました。私が連れていってあげましょう」とホテルの外へと我々を導きました。一緒にいた仲間の一人が自分の車を用意に行ったようです。
そして話しかけてきた本人はスーツケースを一緒に運んでくれながら「私は、日本の東海大に留学してました。東海大の◎◎さん知ってますか。」我々がぽかーんとしてると続けて「○○さんは知ってますか。○○さんはには大変世話になりました。」と話したのです。どうやら柔道関係の人のようでしたがまったくわかりませんでした。
待機していたタクシーに我々を乗せ、その東海大の元留学生は自分たちの車に乗り込み、
タクシーの運転手に遅れずに着いてくるように言い残し車を発進させました。
タクシーの運転手はちょっと慌てたそぶり。
それからはもう映画の世界にでも入りこんでしまったかのようでした。
夜のモスクワの町の中、タイヤをきしませながら猛スピードで走るロシア人の車。
それに離されないように必死なハンドルさばきで着いて行くタクシー。
我々はタクシーの中で必死に踏ん張ろうとするが、あっちに引っ張られこっちに押しつけられ、とっても怖く、顔をひきつらしていました。ホントに映画のカーチェイスのようでした。もう勘弁してくれーという感じでしたが、何とか死なずに駅に着きました。
息も絶え絶えという感じですが、さあ早く列車に飛び乗らねばと思っているのに
そのロシア人は悠々と構えているのでした。
「おい何してるんだ」と思ったら、
「私、間違えてました。レニングラード行く列車が出る駅は遠くありませんでした。
充分間に合いましたね。」と。
そして荷物を運ぶのを手伝ってくれて列車に乗り込んで
「東海大の○○さんホントに知りませんか」とまた聞くのであった。
そして
「東海大の○○さんには大変世話になりました。」
「東海大の○○さん会ったらよろしく伝えてくだい。」というのでした。
そして我々が乗り込んだレッドアロー号は彼らに別れを告げ
夜のモスクワを後にしたのでした。
ふと気が付くと彼らの名前さえ聞くのを忘れていました。
彼らはいったい何だったのでしょうか?
「実は彼らがもともと我々につくはずのガイドだったのだ。」
「いややっぱり関係ないけどたまたま親切な元留学生だよ」
「駅を知っていてタクシーの運転手について来いと言ったくせに実は勘違いしていて、
あんなにとばす必要もない程近かったなんて何か不自然だよ。」
いずれにしても、ソ連もすでにない今となっては真実はわかりません。
ただ何となく貴重な体験であり、ちょっとワクワクするようなスリルを味わった事だけは事実でした。